(ソフィアス)





最初はただ単にお花を育てようと思った。アスベルのお母さんにもらったダリアの花の種。ケリーは私にいつもお花の種をくれる。貴女に育てられるお花はどれも美しく育つからって。お花の気持ちを誰よりも理解できるからって。でも私、お花と喋れないよ?って、ヒューバートに尋ねたらものの例えですよものの例えって困った顔して教えられたけどやっぱりよくわかんなかった。もののたとえって何だろう。
アスベルの家のまえの花壇はクロソフィのお花。シェリアの家の前の花壇も、私が植えたお花でたくさんで、もう新しく植えることはできなかった。でも私のうでのなかにはダリアの種があってそれの居場所はここにはなかった。どうしよう。どこに埋めれば良いのかな。



(………そうだ、裏山)



アスベルとの思い出がたくさんつまったラントの裏山。思い出してみればあそこがアスベルと初めてであった場所だった。胸が温かくなって、気づいたら裏山に向かって走り出していた。アスベルとの思い出の場所を、自分が新しく築いていこう。種のつまった袋を抱き締めて、すぐ花を咲かせてあげるからね、と囁いた。


***



「ここら辺でいいかな………」



思い出の木の前にはたくさんのクロソフィが咲いていて、少し外れた場所にある一角に植えることにした。ごめんねお花さん、少し場所借りるね。クロソフィの傍らに自分が育てたたくさんのダリアが咲くことを想像したら何故か嬉しくなった。私はダリアを埋めるための土を掘り始めた。


***



「ーーーソフィ!何をしているの」
「………シェリア?」
「遅いから心配したのよ、そんな土だらけになってどうしたの」
「土………?」



辺りを見回すともう外は真っ暗で自分の体は土ボコりだらけだった。いつの間にかこんなにも時間が過ぎていた。土を掘るのに夢中になりすぎていた。ちらりと穴をみやれば人が入りそうなほど大きな穴が空いていて。こんな大きな穴では花の種には向かない。種はまだ埋めてすらいないのに。


「あのねシェリア、私ここで新しいお花を育てるの」
「あら、素敵ね、ここはソフィとアスベルが初めてであった場所だものね」
「うん………初めてアスベルと出会った特別な場所」
「ふふ、アスベルが見たらきっと喜ぶでしょうね」
「?どうして、アスベル喜ぶの」
「それはね、アスベルはソフィが大好きだから、ソフィが頑張って何かをしていると嬉しいのよ、ソフィはアスベルにとってかけがえのない宝物だから、それに裏山なんて場所をわざわざ貴女が選んだってことは、アスベルにも関係があるってことでしょ」
「アスベル………嬉しい………」



ケリーから貰ったダリアの種を思いきり握りしめると、ぽとりと一つ種が飛び出した。あ、拾わないと。ーーーそういえば前に本で読んだことがある。ダリアの花言葉は華麗、威厳。どれもアスベルにどこか似ている。アスベルはすごく綺麗。威厳はあんまり無いかもだけど領主としての仕事をこなしているときのアスベルは誰よりも格好いい。綺麗で美しくて優しくて、私の大切で………………大好きな人。アスベルの喜ぶ顔を見ると私も幸せになれる。そうだ、そうだよ、アスベルを私が喜ばせばいいんだ。そしたらきっと、もっと嬉しいはずだからーーー




「アスベルにプレゼントしたら、アスベル、喜んでくれるよね」



アスベルに渡すもの。普通のお花より、もっとびっくりさせたいな。アスベルが好きなお花。アスベルが好きなもの。アスベルが喜んでくれそうな、何か。アスベルが大好きで愛しているーーーシェリアの指についているマニキュアが、光った気がした。




「ーーーねぇシェリア プレゼントしたらアスベル喜んでくれるかな」
「ふふ、当たり前でしょ、ソフィからのプレゼント、なんだから」
「そっか、ありがとうシェリアーーーじゃあ、







お腕、私にちょうだい」






恐怖ガーデン




素敵すてきな花の完成!